LOVER INDEX

#14星と空とを海で割ったようなプルシャンブルー4



  静かだった。
 自分が何かを話さない限りここは、いつも静かだ。
 
  これは、まさに日常の風景だ。
 
   
「パーガン」
 気がついたときには部屋に居た。部屋に居たというより目の前に居た。
 いつやってきたのかも解らなかった。
「もぅそんな時期だったのですか!」

 そんな驚いている彼女に対してパーガンはいつもと同じように答える。
「はい。お嬢様。」
「何故、忘れていたのかしら。いつもは絶対に忘れることなど無いのに!」
 
 彼女はパーガンの来訪を心から嬉しそうに語る。
 自分の部屋を訪れる者は本当に居ないと言っても過言ではない。本や話し相手の機械人形たちは確かに沢山居るが、パーガンはまた別の話だ。

「今日はどんな話をしてくれるのか、今から楽しみです」
「それは、何よりです。さて、まずお茶を淹れましょう」
 パーガンはそう言うとお茶の準備を始めた。彼が淹れるお茶は自分とは比べものにならないほどの、素敵な香りがする。
 
 
  パーガンは4ヶ月に一度、決まって部屋にやってきた。
 そして、サンクキングダムのことを初め、『EARTH』のしくみやそれこそ、歴代の王達の話といった様々なことを話しにやってくるのだ。
 パーガンは、サンクキングダムが建国された当初から現在まで、唯一稼動し続けている機械人形だ。
 
 
  流石のOZも、浮島『EARTH』を浮かせている根本の方法を含め、細かい事は一切わかってはいないのだ。それは、サンクキングダムでも王族だけが知る秘密として長い間、王から次の王へと口づてで伝承することが決まりで、書物等には一切載ってはいないからだ。
 そして、その唯一の例外が、王族に仕えるバトラーである機械人形のパーガンだ。
 彼だけは全てのことを知っていた。

  OZも、幾度も直接彼から情報を引き出そうと手を焼いたが、全て失敗に終わった。
  それは、彼には古代魔導を初め前世紀の技術が多数組み込まれており、下手に手を出せば全てのデーターが消去する可能性が捨てきれないためだ。
 その為、こうして彼女と定期的に引き合わせる結果となった。
 
 初めは部屋の監視もしていたが、パーガンの中に組み込まれている前世紀の技術のなせる業か、彼の声は機械を通しては一切聞こえなかった。 そのせいで、この部屋に何体も居る世話用の機械人形達の聴覚も、彼がそのことを意識して話さない限り反応すらしない。
 おかげで後で録音されたものを聞いても、少女が一人で話しているようにしか聞こえないのだ。

 しかし、彼女は普段から口数が極端に少ない。だから、彼女の話から内容を探るのはほぼ不可能だった。
 
 そこで、監視人をつけることも検討はしたが、誰をつけるかで今度は大問題となりこれも却下された。その話しを聞いた人物が、報告書に嘘を記載するとも限らないからだ。何しろ彼の声は録音が出来ないようになっているのだから。
 
 なんとも厄介な代物だった。
 そんな厄介な代物であるパーガンの外見は老人のような風貌だ。
 機械人形だと言われなければ解らないほどに彼は精巧に出来ている。

  そんないつも、新しい話をいろいろしてくれるパーガンが、この場所に訪れる 日を今まで忘れた事は無かった。
 今日は一体どうしたのだろう?
 少女は首をひねるが、確かに近頃は信じられない程いろいろあった。
 忘れても無理が無いことなのかもしれない。
 
 にこにこと、そんなことを考えていると声をかけたれた。
「どうかなさいましたか?」
「どうか?何かおかしいですか?」
 少女は椅子に座ったまま、辺りを見回す。

 そこにはいつもと同じような自分の部屋だ。
 沢山の木々が植わっていて機械人形たちが静かに各々の作業を続けているいつもと同じ静寂な自分の部屋だ。

 そんな、辺りを見回し続ける彼女に向ってパーガンは言う。
「何か良いことがあったのですか?」
 それを聞いてようやく自分のことを言っているのだと気がついた。
「ええ!そうなんです!」
 何も話してはいないのに、パーガンは自分の事をいつも本当に良く分かっている。
「聞いてください、パーガン。」
 彼女は椅子から勢いよく立ち上がる。
「すごく、素敵な人たちと沢山出会いました」
 
 パーガンはそんな彼女の話を静かに聞き続けている。
「それから、すごい機械人形とも!本当にすごいんです、彼!名前をゼロって言うの。本当は別の名前を教えていただいたのですけど、ちょっと長くて。直接彼に何て呼べば良いか聞いたら、教えてくれて」
 少女のあまりに嬉しそうな声に、辺りで作業を続けている機械人形たちも集まってきた。
 彼女の性格を事細かにプログラムされている彼らでもここまで、自分からいろいろなことを語る彼女は、記録にも全く無かった。
「それから、今、一緒に行動している人もいて!ああ、本当に何から話せば良いのかしら。彼も、本当にすごいのです」
 少女が笑顔で永遠語り続ける様子に、辺りに集まってきた機械人形もパーガンも皆嬉しそうに笑っている。
「お嬢様がそんなに幸せそうなところを始めて拝見いたしました」
 その言葉に少女はそうだったかっと、記憶をたどるが、何か、もやがかかったようで上手く思い出せない。

 しかし、今はそんなことよりも皆にどう伝えれば良いのか考える方が先だ。
 あれから沢山のことがありすぎた。

「本当に、地上はここと違い、確かに大変なのですけど、嬉しいこともあります。沢山。」
「それは宜しゅうございました」
 パーガンの声は本当に嬉しそうだ。
「ああ、本当に直接紹介できれば良いのに!名前はヒイロ・ユイと言って、驚いたのですが、わたくしと同じ、ユイと言うそう………」
 そこで突然、彼女の言葉が止まる。

 ん?

 何か先程から話す内容に、おかしな違和感を感じるのだ。

「………ユイ…?…今、この名は…」
 目の前を見るが、変わらず自分が知っている皆が微笑んでいる。


 
「それに…紹介するって……。ヒイロと会った時は…みんなは…もぅ」
「どうしました?お嬢様?」
 パーガンはお茶の準備を止めて、心配そうにこちらを見つめている。

 
 ようやく理解してきた。
 
 泣きそうだ。
 でも、泣かないとあの時約束した。
 苦しく悲しくても笑顔を絶やすなと。だからぐっと我慢する。
 
 他の誰でもない、パーガンの教えだから。



  王は皆の前で泣く事は絶対にしてはいけない。

 でも、泣き出してしまいそうだ。
 だって、目の前にこうしているのだ。
 

  だから、リリーナはぐっと目を閉じる。

  忘れてはいない自分は。
 忘れてはいけない。忘れてはいけない。忘れてはいけない。
 必死に自分に言いかせる。

  彼らは皆、死んだ。
 私が…壊した。

 一人を除いて。

パーガンを除いて。





 



「私が知りうる事は全てお教えしました」

 リリーナは静かに頷き、パーガンに礼を言う。
 片手にはしっかりと刀を握っている。話にはずっと聞いていたが、今晩現物を、パーガンが持ってきてくれたのだ。どこからかとは聞かなかったが、OZから盗ってきたとこだけは確かだと思う。

 激しく雨が降り続いている夜だった。
 今日しかない。
 

  部屋の電気は全て落としてある。
 後は、目の前の戸を開き、飛ぶだけだ。
 『EARTH』から、地上に向って。
 浮遊の魔導も散々試してはみたが、全く使えなかった。しかし、地上へ向って飛ぶことは、初めてではない。だから、きっと大丈夫。
 いや、そんな気持ちでは駄目だ。やり遂げないと駄目だ。

  周りを見渡すと、皆がまっすぐに自分を微笑んで見つめている。
 そこにいる誰もが、私ならば大丈夫だと直接伝えてくる。

 そうして、最後にパーガンと目を合わせた。

「本当にありがとうございます。刀のことも、…他のこと全てを含めてパーガンが居なければ、ここまで来られませんでした」
 パーガンは『EARTH』を出ると告げた日から今日まで、一切反対することもなく、ただ力を貸してくれた。OZのデーターを書き換え続けたのもパーガンだ。本当は反対されると思っていた。サンクキングダムの恥だと。

 だから、尚更力を貸してくれたことが嬉しかった。

「とんでもございません。私は、ご主人様のお力になるために存在するのですから」
 パーガンはいつもと変わらない優しい声だ。
 そうは言っても、この後、自分が居なくなった後彼らはただですむはずがない。わたくしはそれが解っていて、―――行くのだ。

「パーガン…」
 リリーナがそんな何かを語ろうとした途端パーガンの方が先に口を開く。
「お嬢様、最後に一つだけお許し願いたいことがございます」
 リリーナの瞳が微かに開く。
 自分の言葉を止めてまでパーガンが、何かの話しを始めることなど今まで一度も無かったからだ。

  だから、嫌な予感がする。それも、ものすごく。
 そんなリリーナに対してパーガンは静かに語る。
 
 「私は今からきっかり8分後に、全ての機能を停止させます。」
 「え!?」

 突然の発言にただ驚くことしか出来ない。
 
「OZはお嬢様がここから居なくなったと知れば、必ず私達を調べるでしょう。ですが、私達は何もお話しするつもりがございません」

 辺りに居る全ての機械人形たちも同感だとばかりに何の言葉も発しようとはしない。
 普段は意識しなければ気がつかない心臓の音が、うるさいくらい体全体で感じられる。

ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクン


「そこで、記憶を全て消去することにいたしました」
「消去!?」

「ですから、私がお話した事はお忘れにならないようお気をつけください。この先、お嬢様がお困りになっても、私の知っていることをお話しして差し上げることが出来ません」
「パーガン!少し、」

 リリーナが先程から言葉を挟むがパーガンの言葉は全く止まらない。
「しかし、お嬢様ならば心配はございませんね」

「ちょっと、待ってください!パーガン…だって、突然そんなこと…そうです!第一、機械人形の自殺は禁止されているはずです」
 ようやくパーガンの言葉をとめることが出来たかと思ったら、自分のあまりの醜態に言い訳すら出てこない。
 散々、機械人形と人は変わらないと言っておきながら、自分は何を言っているのか。

 しかし、そんなリリーナにもパーガンは優しく語る。
「確かに、我々機械人形は記憶を自ら消去する事は禁じられております。しかし、私たちには一つだけ例外があります。それは、主人の身を護る場合にのみ可能なのです」
「パーガン、わたくしはそんな事は望んではいない」
 即座に、強い口調でリリーナは訴えてくるが、パーガンは応じはしない。

 もう時間が無い。
「これが、お許し願いたいことです。報告が事後になってしまったことをお許ししていただきたい」
 今度こそリリーナの言葉が止まる。
 
 
「私たちの記憶を消去するプログラムは、お嬢様に刀をお渡しした時点で既に発動しております。止める事は出来ません」
「どうして!?だって、そんなこと、許せって…そんな…それに、私たちって、他の皆も!?」
 周りを見渡すとただ、黙って誰もが僅かに頷いていた。
 その様子に、泣くよりもただ、やるせなさが溢れてきた。
 どうして、自分は気がつかなかったのか。
 どうして。どうして。どうして。

 
 
  「そんなこと、許せると思っているのですか!」
 リリーナは吐き出すように告げる。
 この部屋はどんな音がしようと外にもれる事は無い。

「お嬢様が、そうおっしゃられるだろうことも、わかっておりました。お許しくださらないだろうことも。老婆心の出すぎた真似だとお思い下さい」
 パーガンは心から申し訳ないと頭を深々と下げている。

 違う。
 パーガンは何も悪くない。
 頭では嫌というほど解っているのに、わがままで傲慢な自分はそれを言うことが出来ない。
 ただ、莫迦みたいに口を閉じている。

 こんな自分のために。

 全てが悲しくて、気が緩んだ次の瞬間、涙が溢れる。それだけはしてはいけない。絶対に。
 

  しかし、時間は残酷だ。待ってはくれない。
「お嬢様…お別れです」
 その言葉にリリーナの顔色が変わる。
「本来ならば、お見送りをして差し上げなければならないのですが、お許しください」
「パーガン!」
 リリーナが必死に叫ぶ。
「お嬢様ならば心配ございません。体に十分お気をつけください」
「パーガン、待ってください。だって、わたくしはまだ……パーガン?」
「…………………………」
 パーガンは目の前を向いたままピクリともしない。
「……ああ…」
 最後の言葉を告げたのと同時に、パーガンの動きは全て停止していた。

 わたくしは何て愚かなのだろう。
 何故、何故自分は早く告げることが出来なかったのか。
 言葉だけでも告げてさえいれば、少なくともパーガンの心は救われたかもしれないというのに。
 
 ただ一言。許すと。パーガンの行動を認めると…。
 解っていたのに!
 自分は何て愚かなのだろう。

 パーガンを見ると、いつもと同じ優しい微笑を保ったまま止まっている。
 あまりのことに言葉も出ず、ただパーガンを凝視していた。そんな自分に回りに残された機械人形たちが、大丈夫だからと、安心しろと声をかけてくる。
 
 彼らに残された時間も本当にあとわずかだというのに。
 
 同じことを繰り返えすことはしない。
 だから、苦しくても言わなければならないことがある。
 
 あの日、王になると決めたのだ。
 この判断が本当に、正しいかどうかはわからない。
 今でも判断がつかないのだ。
 それでもこれが、ピースクラフトを名乗る最初の命令。
 
 
「許します。皆の行動を許します。リリーナ・ピースクラフトの名において…許します。そして、感謝します…心から」
 
 静かに、しかしはっきりとそれだけ告げた。
 
 彼らもそれを、静かに聞いていた。
 
 最後にもう一度だけパーガンを見る。
 そして、そのまま地上へと飛んだ。








「!」
 突然覚醒した。
 呼吸がとんでもなく荒い。
 ゼエゼエと、肺が空気を大量に求めていた。

 夢だ。
 解っている、夢だ。

 今のは、夢だ。

 『EARTH』を出てから何度も見る夢だ。
 既に過去に起きたことだ。解っている。
 
 何度も自分を落ち着かせるために言い聞かせる。
 しかし、どうしようもないほど心臓がドキドキして静まる気配が無い。
 それどころではないというのに。
 無理矢理頭を切り替える。


 ここは一体何処なのか!?
 何とか起き上がるが、全身がだるくてどうしようもない。

 聖堂に行くと言って歩き出した。

 そう考えた直後ハッとして、肩の辺りを触る。一箇所が微かに熱を持っていた。

 そうだ。突然肩がチクッとした途端、視界がぐらついた。
 これだけ、眠っていたところを見ると睡眠薬か何かだったのかもしれないが、そんなことよりもここは一体何処なのか!? とても豪華な部屋だ。
 しかし、広さはそれ程広いわけではない。大人が5人も入れば窮屈だろう。
 どうやら隣にも部屋があるようだが戸が閉まっていて、確かめるすべは無い。

 そして、起きた直後から探しているが、全く見つからないところを見ると、どうやら、持っていかれたらしい。

 刀が何処にも無いのだ。

 ベットの横にある窓には板の戸が閉まっていて外の様子は解らないが、天窓からは空が見える。辺りは既に真っ暗だ。

 自分は一体どれだけ眠っていたのか想像すらつかない。
 しかし、列車ではない。
 良かった。まだ出発はしていないらしい。
 部屋に置かれた本棚や道具を見る限り教会関係だという事は悩むまでも無い。ここは、聖堂なのだろうか?

 兎に角、今すぐここを出なければ。
 ヒイロは、デュオは?サリィさんは?
 気になる事はあとを絶たない。

 リリーナはだるい体のまま起き上がり、扉の前まで来るとピタリと足を止めた。
 見たことも無い形だが、結界だ。
 『EARTH』にもあったが、あれはわたくしでも破れなかった。
 これは、どうだろう。ガンガンする頭で必死に考える。
 ヒイロが居れば一目見ただけで破り方を教えてくれるのだが自分ではどうも区別がつかない。
 そんな時、ヒイロの言葉がふとよみがえる。
 何かあったら躊躇するなと。全力で行けと。

 その言葉の意味においても、他の事でも思う事は山ほどあるが今は意識を集中させる。躊躇していては駄目だ。全力で行けと。
 リリーナは一度深呼吸をし、力を込めた。
 
 
 
 
 突然どこかで、自分の部屋まで響くような轟音がした。
「何だ!?」
 デュオは持っていた魔導書をベットの上に放り出し、音の方向に駆け出した。
 そうして、暫く走ると一人の男がうずくまる様にして倒れていたが、それには目もくれず先を急ぐと、次々と廊下に牧師やシスターを含め兵士までもが倒れこんでいる。
 辺りに残されている魔導の種類から考えて強力な睡眠系のものだとは判断がつくのだが、これだけの人数を…流石だとしか言葉がでない。自分も先程から防御呪文を張り巡らせて置かないとすぐ体をのっとられる。
 そう、それ程この魔導は強力なのだ。
 デュオは目当ての部屋にようやくつくが、その状況にとりあえず感嘆の声を上げる。
「いや、すごいな。あれくらいの結界じゃ関係無いってか…参ったね」 
 戸は向かいの壁まで吹っ飛んでいた。
 とりあえず、部屋はそのままに後を追うと走っていると、何とラファエルがいた。
 
 放っておくことも出来ないので声をかけた。自分も昔一度同じような目にあった。
「だから言っただろう?お嬢さんは強いって。ほら、今、痺れを取ってやるから暴れるなって」
 デュオはラファエルにかけられている魔導を解きながら言う。
「貴様こそ、姫は朝まで眠っているはずではなかったのか!落ち着いて事情を説明する時間も無いではないか!」 
 ラファエルは怒鳴る。
 その言葉にデュオも、少し苦笑いを浮かべる。
「そのはずだったんだけどな。兎に角後を追わないとな」
 
 デュオとラファエルはそのままリリーナの後を追う為に階段を駆け上がる。




 心臓が破裂しそうなほど、勢いよく走り抜けてきた。
 この建物は一体なんなのか!?至る戸をあけてもあけても部屋だらけで出口らしきものが一切無いのだ。
 仕方が無いのが、とりあえず外に出れさえすれば屋上だろうが構わない。上に向う階段を駆け上がってきた。
 そして、ようやく目の前の頑丈そうな鉄の扉までやってきた。
 
「!」
 構わず吹っ飛ばした。
 それと同時に外気の冷たい風が勢いよく吹き込んできた。
 ようやく外だ。
 そう思い、外へ足を一歩踏み出した途端、あまりの光景に絶句した。
「!?」

 後ろから沢山の足音が聞こえるうえ、外に居た多くの人たちが作業をやめてこちらを見ているが、リリーナは逃げることもせずただ辺りを見まわし続けている。


 …何がおきているのか全く理解が出来ない…ここは…何故ここにいるのか…

 ここは、聖堂でもなかった。

 「姫様!どうかお聞きください!」
 ようやくやってきたラファエルが、叫んでいる。
 その横にはデュオも居る。
 そして、彼はどう見ても捕らえられているようには見えなかった。つまりはそういうことなのだろうか。
 「姫様、甲板は冷えますからとりあえず中へお戻りください」 
 
 リリーナはラファエルの言葉に答えることもせず、360度全てに広がる大海原を見渡し続けた。

 ここは船の上だった。 


2005/3/7


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